海外駐在の辞令が出たら、家族はどうしますか?
約3年半の駐在生活を終え、経験したからこそお伝えできることを記録しておきます。
きっと、日本では経験できないこともたくさんできると思います。グローバルな感覚や多様性を身につけたり、きっと語学も堪能になるはずです。
しかし、定型発達の子と比べて発達特性のある子を連れての海外生活は大変なのは間違いないと思います。
もし、帯同する前の段階で特性がわかっている場合は事前にできることがあるかもしれません。
そして我が家のように渡航後に海外生活を始めてから環境が合わなかったり、特性がわかる場合もあるでしょう。
「駐在生活なんて羨ましい」
「いいな~」
など、よく言われましたが、旅行で行くのと住むのとでは大きく異なります。
息子の特性がなかったとしても、母親自身の海外生活のストレスもあります。脅しているわけではありませんが、言葉の壁、治安の不安、食べ物、人付き合い、気候などなど、不自由さはつきません。あと日本人のコミュニティの狭さには驚きました。
もちろん、赴任する国にもよるかもしれませんが、事前にあらゆる可能性を考え、できる限り準備をした上で、ついていくことをお勧めします。
海外転勤の辞令が出たらやること
ついていくかどうか話し合う
まずやることは、家族の話し合いです。
海外暮らしなんて「いい経験だよね」「貴重なチャンスだよね」とプラス面だけを見てきめてしまうのは危険です。
その結果、子どもが不適応のため荒れたり、体の不調を起こすこともあります。
「子どもは柔軟だからすぐ慣れる」
「吸収が早いから大丈夫」
という方もいますが、子どもだからといってストレスがないわけではありません。
選択肢にもし日本人学校や日本人幼稚園がなく、インターナショナルスクールか現地校しかなければ、おそらくそこに身を置くことになるでしょう。
これは下の娘のことですが、現地の幼稚園に年中から入りました。何の言葉もわからない環境に突然放り込まれ、とても不安そうに教室に入っていったあの日の後ろ姿は忘れられません。娘は寝る前に泣いたり、ストレスで1週間くらいお昼ごはんが喉を通らなくなりました。
また、息子のように発達特性がある場合、環境の変化に弱い場合もあり、結果、二次障害を引き起こす可能性もあります。
子どもの年齢やタイプにもよりますが、そうなった場合は、親は受け止めていかないといけません。私自身、子どものことが気がかりで自分が悩む暇は最初の一年はありませんでした。
ついていかず日本に残ると決めた場合も、ワンオペ育児となりますので、決して楽なわけではありません。
支援は引き続き受けられるのでその面では安心感はありますが、家族が離ればなれで数年暮らすことになります。
夫婦はもちろん、子どもも話が分かるようであれば気持ちは聞き、帯同するかについてよく話し合うことが大切です。
赴任先に日本人学校はあるか
日本人学校とは、文部科学大臣から、国内の小学校、中学校、若しくは高等学校と同等の教育課程を有する旨の認定を受けている学校です。現地の日本人会等が主体となって設立されている学校が多く、私立学校の扱いとなります。令和4年4月15日現在では、世界49カ国・1地域に95校が設置されています。日本人学校は、教育課程は、原則的に国内の学習指導要領に基づき、教科書も国内で使用されているものが用いられています。
文科省のホームぺージには、日本人学校及び私立在外教育施設の一覧を掲載しているので、まず赴任地に日本人学校があるかを調べ、次に学校のホームページでどのような学校か調べました。
赴任国に日本人学校はあっても、大体は主要都市にしかありません。勤務地が別の都市で遠いため通えないということもあるので、住む場所から通える場所に学校あるか調べる必要があります。
支援があるかどうか
日本人が多く駐在している国(タイ・中国・シンガポールなど)にある日本人学校には、特別支援の先生がいることもあります。一方、人数的に教員の余裕がない日本人学校もあります。その場合、補助で付く先生が確保できません。転勤で赴任する場合は最低でも1年、通常3、4年といったケースが多いため、サポートが必要な子供にとって、適切なサポートが受けられない環境に何年もさらされることになります。
各日本人学校の受け入れ態勢に関するサイトははこちら。
インターナショナルスクール、現地校という選択肢
日本人学校がない場合のほとんどが、このどちらかになるかと思います。日本人学校があっても、あえて現地幼稚園からそのまま現地小学校に進学するケースや、英語を身につけるためにあえてインターナショナルスクールに通わせる家族も多くいらっしゃいました。
インターナショナルスクールや現地校のほうが個性を認めてくれるというのもあり、発達の特性があっても受け入れてくれることも多いようです。
ただ、その場合一番ネックになるのは、日本語教育です。補習校がある国もありますが、ない場合は親が日本語教育をするか、外部の家庭教師や通信教育で補う必要が出てきます。
その子にとってもっとも最適な環境はどこか
赴任前は、特に発達の指摘もされなかったので、迷いもなく息子の学校選びは日本人学校一通りでしか考えていませんでした。
しかし実際入ってみると、周りに誰一人理解者がいないという環境に耐え兼ね、途中でインターナショナルスクールに移ることになります。
「日本語だから大丈夫」「日本と同じ勉強内容だから大丈夫」というわけではありません。本人が出すストレスのサインを見逃さず、そのような場合にも対応ができるように、いくつか選択肢を考えておくと親もどっしりと構えていられます。
相談出来るところとつながっておく
我が家は途中で、発達特性がわかったので事前に相談できる場所は調べてありませんでした。
一時帰国がもう見えていたので、とりあえず実家の近くの発達クリニックを事前に電話予約をして、一時帰国の際に受診しました。だいたい1カ月待ちだったりするので、スケジュールがわかった段階で、早めに予約を取るようにしていました。
当時はこちらのサイトの存在を知らず、自力で調べたのですが、海外で暮らしている発達障害や発達特性をもつ家族向けに世界中の相談窓口一覧を記載したサイトです。我が家がお世話になったカウンセラーの方のお名前も記載してありました。
最近はオンライン相談を行っているところも多いので、近隣諸国のサービスを受けることも可能です。
当時、必死で検索していましたが、こちらのサイトに出会っていればまた状況も変わったかもしれないなと思いました。
こういった海外在住の方向けの情報は、本当に助かります。
発達障害の子にとって海外は生きやすいのか
発達特性のある子にとって海外は生きやすくもあり、生きづらくもあると思います。
発達障害や特性がある子にとって、海外が生きやすいとされる点としては、個人主義であることや、多様性を認めてくれるところではないでしょうか。
実際、日本人学校で先生に怒られてばかりだった息子は、インターナショナルスクールに移ってからはほとんど怒られなくなりました。息子の個性を先生や仲間が丸ごと認めて受け入れてくれていたからです。
インターナショナルスクールに移った結果、あれほど嫌いだった学校が、もはや居場所になるくらい心地の良い場所になりました。
他方、生きづらい点としては、やはり日本のような支援や医療が受けられないということです。
諸外国にも発達障害に関しては支援はありますが、内容が違ったり、薬も違う可能性があります。そしてなにより言葉の壁があり、そういった面では生きづらいと思います。
まとめ
このように、発達特性の有無にかかわらず、子どもを連れての海外赴任は、いくつか留意する点があります。
実際に帯同を終えて、今現在発達特性のあるお子さまを抱えて駐在している方や、これからする方へ一番お伝えしたいことは、「頑張りすぎないこと」です。
国際結婚など永住となるとまた話は別ですが、いずれは日本に帰るのであれば、だめだったらいつでも帰ってくればいいのです。
実りある海外生活になりますように…